池上彰「参院選特番」に80年代テレビの「サブカル」を見た

明らかに1日遅れの話だが、国政選挙の特番はテレビ東京が民放3連覇の偉業を成し遂げた。

参院選特番、池上彰テレ東が3連覇!視聴率民放トップ11・6%
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160711-00000089-spnannex-ent

自分は今でこそ「池上彰ファンクラブ」に入会しており、著書も番組もマメに拝読拝見しているが、1986年伊豆大島三原山の取材で見かけた時は、失礼ながらいかにもNHKぽいプライドの高さと、毒のある雰囲気しか印象に残っていなかった。

池上彰氏といえば「週刊こどもニュース」の延長線で、芸能人に対し小学生と同レベルで解説するいわゆる「わかりやすさ」が売りだが、こと選挙特番に関しては別な側面、つまり「毒」が売りになっている。

その詳細はすでに色んなメディアで紹介されているので省くことにするが、日本会議でも創価学会でも労組でも、ネット上では話題になっているがテレビではまさか取り上げないだろうという視点に切り込んでいく点が、視聴者を刺激し続けたことは間違いない。

演出サイドもそれをよく理解しており、当選者のプロフィールに「ひと匙の毒」を盛り込んでいる。

誰も得しないけど選挙プロフィールをみんな密かに楽しみにしてた件【選挙速報】
http://matome.naver.jp/odai/2146814955255586501

「これって80年代バラエティそのものぢゃん!」そう、池上選挙特番は自分がADとしてクソみたいに働かされた時の「オレたちひょうきん族」を彷彿させるサブカル番組だったのだ。
たけちゃんマンは池上彰氏。「強きを助け、弱きをくじく」のが政治家で、ネタやギャグ(選挙公約、争点)中心ではなく(候補者の)キャラクターを前面にさらけ出した。

今回の参院選は事前の調査と票読みで結果がほぼ明らかになっており、近年でも稀に見るつまらなさだった。これを池上氏とテレビ東京はまともに取り上げず、番組全体を「選挙をネタにしたパロディ番組」に仕上げたように見て取れた。80年代でいえば本家の「ザ・ベストテン」をパロった「ひょうきんベストテン」かな。

これが「公共の電波としてどうなのか」とおっしゃる識者もいるだろう。だが、開票速報と分析ならNHKの組織力にはそもそもかなわない。これは選挙の開票ディレクターを何度もやった自分の実感だ。
ならばNHKでは絶対にできないサブカル選挙特番で勝負するのは、民放として一つの選択だし、その評価が11.6%という視聴率(関東)に現れている。

かつてフジテレビのバラエティ黄金期を作り上げたプロデューサーである吉田正樹氏は「テレビはサブカルチャーをうまくフィーチャーして、サブカルの物や人を吸収してどんどん大きくしていくっていうのが地上波の醍醐味だと思う。」と言ったそうだ。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tvnosukima/20160103-00053075/

もちろん報道番組として成立させるために、事実関係の細かい調査など、スタッフの努力は大変なものであったろうと推察する。質の高いパロディほど手間のかかるものはない。
サブカル選挙特番成功の結果を受けて、テレビ界全体が再度サブカル化に回帰してくれればと密かに願う、昨日今日である。